質問:評価者による甘辛に困っている。明らかに非常に甘い評価者、厳しい評価者がいる。更には真ん中の評価しかつけないような評価者までいる。安易に社長の私が調整しては、制度の意味がなくなってしまう。どのように防止したらよいか?
回答:甘辛防止、これは人事評価制度永遠の課題ですね。いくつかやり方がありますので参考にしてください。
①1次評価者だけでなく2次、3次評価を行なう方法です。評価結果に対して1次評価者のウェートを70%、2次評価者のウェートを30%などとして1次評価者以外にも関与させる方法です。ただ、一件合理的に見えるこの方法にも問題があります。2次評価者や3次評価者は被評価者の数が膨大になり、彼らの行動をあまり見ていないことです。被評価者の行動を把握していない場合、人事評価をしてはならないということは人事評価の原則です。事実に基づかない推測や思い込みでの評価になってしまうからです。2次、3次評価者は全ての要素について評価することは不可能です。従って2次、3次評価者が全ての要素を評価してきたら、それは多くの場合事実に基づかない、推測や思い込みの評価であることに他なりません。これでは被評価者の納得は得られませんし、人事評価の原理原則から外れます。そこで、2次、3次評価者は勤務態度しか評価しないという方法をとった事例もあります。が・・・あまり上手くない方法でしょう。
②2次評価者は評価を行なわず、1次評価者の評価を2人で見ながら話し合い、必要に応じて修正するという方法です。2次評価者は1次評価者から評価の根拠などの説明を受け、2次評価者は自分が目にした被評価者の行動を1次評価者に示し、2人で議論して最終評価を決定するものです。2次評価者は全ての評価に目を通すため、2次評価者担当部門内でのバランスを取ることができます。比較的妥当な方法だと思います。デメリットの一つ目は1次評価者と2次評価者の意見が割れた場合、声の大きい方の意見通ってしまいがちなことです。2つ目は2次評価者からあまり突っ込まれたくないために、1次評価者が差し障りのない、中心に偏った評価をしてくることがあります。ただ、これらは2次評価者がしっかりしていれば防げることなので、悪くはない方法と思います。
③人事評価者会議を実施する方法です。10年ほど前から実施していますがいろいろ試行錯誤したなかで、中小企業であればこれが最もフェアなやり方ではないかと思います。これは評価者全員が一堂に会し全社員の評価を評価者皆で行ないます。部下の評価を他の評価者に見せ意見をもらい、評価水準を統一するのです。これを行なう理由は2つあります。1つ目は前述した評価水準の統一です。「私は○○という行動を△という要素で5点と評価した。」「私はそうではない、□という要素で4点とした。」「それでは○○という行動の場合は、◆という要素で5点としよう。」といった様子で評価水準の統一を行ない、標準化して次回からの評価に活かします。2つ目は評価者が把握していない行動を他の評価者から提供してもらうことです。評価者は部下の行動を全て把握することは不可能ですから、他の評価者が見ていた場合は情報の提供を受けこの場で補完します。経験則から言うと概ね一人当たり15分程度かかるようです。一日で30名程度出来ます。30名程度の会社ならこの方法で良いですが、これ以上の規模になると何日もかけて全員行なうわけにもいきません。その場合は人事評価者会議で決めた基準を持ち帰り、その基準に基づいて他の部下の評価を行ないます。ここでは社長や経営陣も自分の思いを発言しますから、より求められる人材像が明らかになります。
この人事評価者会議で議事を進める上で非常に大きなポイントがあります。ここには書きませんが、知りたい方は直接メールでお問い合わせ下さい。
色々手法はあるでしょうが、概ねこの3つが代表的な例です。自分の会社に合うようならどの方法でも構いませんが、経験則から申しますと「③人事評価者会議の実施」が最も公平ではないかと思います。②もそこそこいけます。
ただ、以前あったことですが他の評価者からの発言で評価が下がったとき、評価者から被評価者への面接時に「おれはこう言ったんだが、○○課長の発言で評価が下がってしまった」といってしまい、この被評価者が○○課長にあとで咬みついたということがありました。評価者として情けない面接の仕方ですが、あくまで人事評価者会議で決定した基準であり、個々の発言がどうこうという問題ではないということを、アナウンスしておく必要はあるでしょう。
また、人事評価者訓練の実施は必須です。他では「人事評価者訓練」は意味がないといった発言も聞きますが、けっしてそのようなことはありません。それはやり方が悪いだけです。私の経験則から申せば、評価制度の知識が全くない評価者に対しては、「人事評価者訓練」を実施するだけでも、十分効果はあります。制度がしっかりしていなくても、実施する意味はあると思います。というより、これすら受けていない人が評価すること自体に問題があるのです。