質問:人事制度構築の際のポイントは何か?
回答:主なものを挙げますと、①自社専用の人事制度を構築すること、②制度構築の目的は社員の「能力開発」であることを外さないこと、③経営計画や会社のありたい将来像が明確になっていること、④経営陣が求める人材像が明確になっていること、⑤制度を作り上げるという強い意志を社長様がお持ちであること、⑥制度の構築に社員代表を参加させること、⑦不利になりそうな年代や職位の方達を切り捨てないこと、⑧一度決めた制度は社長様や経営陣の皆さんが勝手に変えないこと、⑨毎年メンテナンスすること、⑩運用に力を入れることなどです。
①自社専用の人事制度を構築すること
同業で同規模であっても会社は全く異なります。経営陣の皆様の想い、会社固有の組織風土、お客様、マーケット、社員の能力ややる気など全て異なります。これらにあわせた制度構築、特に経営陣の皆様の想いを反映させることが重要です。同業他社や同規模の制度をそのまま自社に導入しても必ず失敗します。自社の事情に合った自社専用の人事制度を構築する必要があります。
②制度構築の目的は社員の「能力開発」であることを外さないこと
制度構築の目的は能力開発です。「評価して序列付けをして、序列の高い順に高い処遇を行い、低い社員を痛めつけたり辞めさせる仕組み」と勘違いしがちですがそうではありません。「評価、評価」とまるで給与を決定する手段のように言われますが決してのようなものではありません。会社が求める人材像を開示して、そこに向かって努力してもらい会社が求める能力開発を図ることにより社員が成長して会社の業績向上に貢献することこそ制度構築の目的です。勿論最終的には会社の業績を向上させる手段ではありますが、やはり社員の能力開発が目的であると捉えるべきでしょう。
③経営計画や会社のありたい将来像が明確になっていること
経営計画や会社のありたい将来像が明らかになっていて、始めてそこに向かうための人材像が明らかになるわけです。経営計画を作る→経営計画達成のために求められる人材像を明らかにする→それを明示した人事評価制度を作る→人事評価制度で明らかになった人材像に向かって社員自ら能力開発を図る→社員がレベルアップする→会社の業績が向上するというプラスのサイクルを実現したいのです。
④経営陣が求める人材像が明確になっていること
経営陣が求める人材像が明らかになっていないと、どのようの能力開発や行動を求めるかがはっきりしません。これでは評価の基準も明確に出来ません。「店長ならこういう人が欲しい、店員ならこういう人が欲しい」と求める人材像が明確になっている必要があります。これは当然経営計画や会社のありたい将来像につながる人材像である必要があります。
⑤制度を作り上げるという強い意志を社長様がお持ちであること
何が何でもこの制度を構築し、業績向上につなげるのだという経営陣の皆様の強い想いが必要です。これが社員に伝われば、制度構築に対する真剣さも変わりますし、制度の重要さも伝わります。
⑥制度の構築に社員代表を参加させること
社長様をはじめとする経営陣、人事部長(総務部長)だけで作った制度は社員が受け入れません。社員は疎外感を感じ「また勝手に始めた」となり、逆にモチベーションダウンを招きかねません。社員が一緒になって制度を作ると何らかに研修に行くより何倍もモチベーションが上がります。「今はこういう仕事をしているが、ホントにこれでよいのか?」「本来やるべき仕事は何なのか?」と自問自答し明らかにモチベーションが上がります。会社の仕組み構築に参画したとの想いを強くし、更に自分達がかかわった制度であれば後で言い訳も出来ません。
⑦不利になりそうな年代や職位の方達を切り捨てないこと
制度を構築すると悲しいかな、どうしても割を食う年代や職位の方が出てきます。こういう方を切り捨てず、チャレンジすれば報われる仕組みを構築することが必要です。管理職寸前の方などは、今まで多少給料が安くても真面目にやっていれば順番で近々管理職になれると思っていたところ、一気に実力主義に変わりはしごを外されることになりかねません。こういった方に対する処遇に注意する必要があります。
⑧一度決めた制度は社長様や経営陣の皆さんが勝手に変えないこと
制度を構築するということはトップの権限を排除することにつながります。制度にはトップの想いを反映しますが、一度作った制度は1年間だけ黙って見守りましょう。そうしないと「また社長が勝手に変更した。やはり社長が六法全書ではないか」となり、信用を失いモチベーションダウンを招きます。しかし、1年経ったら堂々と「ここと、ここが経営者として納得いかないので検討してくれ」とPTに投げかければよいでしょう。
⑨毎年メンテナンスすること
これは必須です。最初に構築する制度は仮説です。その時点では最も良いであろうと構築したわけですが、激しい環境変化に対応しなければなりませんし、経営陣の想いも変わるかもしれません。また、制度運用上の問題点も出てくるはずです。人事制度は生ものです、必ず毎年見直ししましょう。
⑩運用に力を入れること
制度を構築すること自体は比較的容易です。重要なことはキチンと決まりどおりに運用することです。これが結構難しいのです。人事評価制度運用担当者を任命し、年度予定をアナウンスし、それに基づいて確実に実施していく必要があります。また、問題点や社員からの意見などを集約し、経営陣の想いとあわせながら翌年度の制度修正に反映していくことが求められます。