森林鉄道段戸山線 田峰鰻沢線 

田峰から竹島集落あたり

  段戸山線田峰鰻沢線(うなぎさわせん)は始点(田口線田峰駅の西)から三都橋、豊邦をとおり、滝口橋を過ぎてから鰻沢を北西へ進み、アンコ沢と鰻沢の合流地点が終点だった。当時の地図によると国道420号旧段戸トンネルの北概ね1kmほどのところと思われ、終点の標高は概ね750m。アンコとはこの地域の言葉で「山椒魚」のこと。アンコ沢が鰻沢に流れ込むあたりには当時多くの山椒魚がおり、体に良いとの噂で小さなアンコを生で飲み込む人も多かったと聞く。
 この森林鉄道は田口線田峰駅西にある土場が始点であった。田峰を出るとすぐに現存するトンネルをくぐり国道420号の東の山すそあたりを国道沿いに進む。その先国道は二股に分かれるが森林鉄道は右、国道420号沿いを概ね北東方面へ進む。三都橋の集落に入ると進路をやや北に変えその後大きく北に曲がり旧三都橋小学校の下あたりで橋を渡りUターンして再び国道方面へ向かう。高さを稼ぐため、大きく迂回したのである。三都橋の集落ではそれとはっきり分かる多くの遺構が残されている。内貝津橋のたもとの喜久屋さんのかなり上あたりから90度曲がり北に進路を変え国道に沿って進む。このあたりでは国道に沿ってはいるもののかなり高いところを進んでいるので目にすることは出来ない。しかし三都橋から急坂を登りきり国道が狭くなるあたりから豊邦の集落までは数m上を概ね国道に沿って進んでいる。林野庁が赤いラインの入った杭を打ってあるので、一目でわかる。このあたりでは今でもかなりの部分を歩くことができる。豊邦集落の手前のややのぼりの直線、国道の北やや高いところにある田をはさんで反対側が当時複線になっていた若宮という場所である。植林されてはいるものの足を踏み入れてみると当時の雰囲気は感じられる。
 豊邦の集落に入ると国道の北側に点在する民家の裏をほぼまっすぐ走る。橋の基礎だった石積みや軌道敷用の石垣もはっきりと残っている。愛知県淡水漁協の向かいにある豊原神社の階段と交差すると百メートルほどで国道に吸収される。ここから団子島事業所まで国道に変わってしまった。このあたりは当時今の道より少し低いところを走っており細い道と軌道が交差していた。これより先の道は昭和24年の地図には細い道しか記されておらず、人馬が通る程度の細い道だったそうだ。従って今のような踏切は必要もなかった。
 団子島に入ると落合橋の手前をほぼ直角に右に曲がり現在の砕石場方面へ向かう。すぐに営林署団子島事務所跡が見えてくる。ここが鰻沢線と栃洞線の分岐点である。左に橋がかかっているが当時はこの場所より少し上に鰻沢線の橋があり、本冊子裏面で写真を紹介している。この橋を渡りUターンして落合橋たもとあたりまで進みここから大きく右に曲がる。このあたりでは国道沿いにある民家の上に遺構が残っている。しかし、豊邦小学校横あたりから待合所がある下桑平のバス停までは国道に変わってしまった。このバス停から側道が数百メートル走っているがこれも当時の軌道敷跡である。次に国道と合流する地点から200〜300mにわたって国道の法面工事のために削り取られている。 滝口橋手前では、国道右側に続くコンクリートの壁が終わるやや高いところから再度遺構が確認できる。滝口橋のたもとにある合掌作りのようなトタン屋根の家のすぐ裏を通り、砂防ダムの堰堤下まで進む。ここで軌道敷跡が切れるが、このあたりで大きく左に曲がり、川の対岸へ渡っていた。近くのおばあさんの話では運転手に頼み込んで、田口線の田峰駅まで乗せてもらうこともあったそうだ。
 軌道敷は更に橋を渡ってUターンし滝口橋の少し高いところを国道に沿って進み、その先国道に吸収される。その後新段戸トンネルの橋手前を右に折れる旧道に入り、すぐにまた右に分かれる林道へと進む。ここはシャッターがあり一般車両は通行止めになっている。シャッターを過ぎたすぐ右側には最後のS字カーブがはっきりと残っている。その後は林道に変わった軌道跡を延々進と終点のアンコ沢と鰻沢の合流する終点に辿り着く。当時の写真とぴったりである。現在はこの奥にも林道が続くが、当時は木馬道しかなかった。余談だがそのころ三都橋、豊邦小学校の先生はこの森林鉄道で学校まで通っていたという。

 森林鉄道段戸山線田峰鰻沢線始点からトンネルを抜けたあり。右の森の中を森林鉄道が通っている。国道473号線田峰トンネルを抜けたところからのショット。
 始点から数百メートル進んだ八雲苑近くの東海自然歩道を田峯城へ向かって登ったところにある橋脚の跡。かなりきつい坂を登る。
 同上始点よりの見事な石積み。
 竹島集落にある軌道敷の基礎跡。きれいに四角く切り抜かれ沢からの水が流れている。近くのお年寄りに聞いてみたが何なのかわからない。 
 いたるところにこのような林野庁の境界杭が打ってある。おかげで森林軌道敷跡がすぐ分かる。



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